食器(上演)/食器(上演報告+会場撤去)

食器(上演)/食器(上演報告+会場撤去)

2023年12月2~3日に上演した「食器」と、12月28日に開催した「食器 上演報告+会場撤去」のアーカイブ。

食器(上演)

日時:2023年12月2日15時、3日15時。
会場:非公開(予約完了後、メールにて詳細をお伝え致します)
アクセス:東葉高速鉄道「八千代緑が丘」駅よりバスで10分
入場料:無料

*各回定員2名
*予約は1名につき1枚のみ
*会場の都合上、体の体積が100万立方センチメートルを超える方の入場を一部お断りする場合がございます

設営・出演:小林毅大
メインビジュアル:NIL《メタバース探索ツアー》
協力:Post Passion Fruits

ステートメント

 関東大震災後の朝鮮人虐殺を扱った戯曲である秋田雨雀『骸骨の舞跳』(1924)では終盤、虐殺へと向かう自警団員たちは主人公の反対演説によって、文字通り石にされる。彼らを返り討ちにして別の血みどろを出現させるのではなく、寓話的ファンタジー的操作によって石にするという秋田の意図は理解できる。だが現実には、その後の形式的な裁判と恩赦によって加害者たちの犯行そのものが無化されていく過程を確認できる現在からすれば、批判対象であった自警団やその上部構造である警視庁のことの済ませ方と秋田の試みは、不幸にも一致してしまっている。殺害の直前で人々の動きを停止させることと、動き自体は認めながらもそれがもはや現在においては働いてはいないものとしてやり過ごすこと、そのどちらも「石化」に値する。事実虐殺の事件が世間へ流れこむと、今度は朝鮮人を虐殺から救ったという美談があちこちから噴出するし、その内容は『骸骨の舞跳』での主人公の演説内容と酷似してもいる。
 防衛すること。それは大きな動きに巻き込まれないために、流暢に「十五円五十銭」と宣ってみせることや、手のひらを返して朝鮮人を救ったと声高に叫ぶことではない。おそらく、むしろごく限られたものにしか分からない言葉を話すことである。しかしあらゆる言葉は流れ出し、複製され、流通する。主人公がその存在を賭したふうに言い放った呪文も、すぐさま正論として紋切になる。この矛盾を別の仕方で言い換えよう。わたしはどのようにして秘密を持つことができるだろうか。
 金井美恵子は深沢七郎『絢爛の椅子』とカフカ『断食芸人』に、この問いへの切り口を見出している(注1)。深沢においては、自分が取調室に呼ばれながらも自分の自白がなければ容疑が決定されないような犯罪をすること、カフカにおいては自分以外には決して見通すことのできない断食に対して観客からの絶賛を待ち続けること。当然、両者はともにこの試みに失敗する。完全犯罪は「星が知っているだけ」の行為であり、取調室に引っ張り出されることはないがゆえに、主人公は新聞社に犯人を名乗る電話をして犯行がバレてしまい、断食芸人は自分が何日間食べていないということを観客が理解し絶賛する前に餓死してしまう。
 さて、秘密とは石にすることでもなければ、星が知っているだけのことでもない。明らかになりがら隠れること。もっと言えば、明らかにしそうでなりきらず、しかし隠しきれないこと。例えば秘密とは穴を掘ることだと言ってみる。殺害した遺体を隠すために穴が掘られ、その隠蔽を明らかにするために再び穴が掘られる。この両義性をふまえて、わたしはわたしの故郷を秘密にしたい。

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注1:金井美恵子「絢爛の椅子」(『書くことのはじまりにむかって』所収、中公文庫、1981年)を参照。

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【上演構成】

シーン0:1周忌
場所:玄関から座敷へ
集合。祖母の一周忌を伝える。線香。遺影の説明。近衛兵に行った先祖の話。祖母が亡くなってから叔父の遺影が出てきたこと。
やや唐突に小林退場。

シーン1:電話
場所:座敷
リビングに設置したスピーカーから「シーン1 電話」を再生・上演。客は座敷。
再生後小林、カメラと三脚、戯曲3部を持って座敷に登場。

シーン2 悲鳴を設定する:自白
場所:座敷+台所
母の座っていた座布団で写真を撮る、小林含めて3人。
悲鳴を設定する

シーン3 悲鳴をあげる/聞き取る:噂
場所:ベランダ
ベランダの窓を開ける
p14下マーク1~17マーク2
p17下マーク2~21マーク1
22下マーク1~28
ベランダの窓を閉める

シーン4 悲鳴をあげる/聞き取る:忘却
場所:納戸
p29~37

シーン5 悲鳴をあげる/聞き取る:充血
場所:座敷(奥)
祖母が亡くなって1週間ぐらい遺体が眠っていたところ。布団があったが今はない。
p37下マーク2~41
p41~46

シーン6 悲鳴をあげる/聞き取る:約束
場所:穴
p.47~54

シーン7 秘密
場所:穴と庭
穴から出てくると母親がいる。母親が「終わりです」と言う。幕。

食器 – 上演報告+会場撤去

◯スケジュール
12月28日(木) 13:00開始、17:00解散予定。途中入退場可

13:00~13:45 上演報告
13:45~14:00 撤去作業事前準備
14:00~15:30 撤去作業
15:45~17:00 上演報告(追加)+質疑
*進行の都合上、予定スケジュールを変更する場合がございます。

◯会場
非公開(東葉高速鉄道「八千代緑が丘」駅よりバスで10分ほど。詳細は予約後メールにてお伝えいたします。)

◯入場料(飲み物・軽食付き)
一般:1000円
25歳以下:500円
小学生以下:無料
*当日現金支払い

あいさつ

 12月2日から3日の2日間、各回定員2名の2回の上演をしました「小林毅大 – 食器」の上演報告と会場撤去イベントを、上演と同じ会場にて開催いたします。
 会場のキャパシティの都合上観客数を絞っての上演でしたが、撮影した写真や映像、実際の会場をみて回ることで上演に来れなかった方にもお伝えできればと思っています。
 また、上演に際して私が設営した会場を撤去しようと考え、イベントに来られる方にはこの撤去作業をお手伝いしていただきたいと思っています。つきましては屋外作業になりますので、動きやすく汚れてもいい格好でお越しください。
 会場は私の住む実家から徒歩2分の距離にある私の父方の祖母宅なのですが改めて考えると、この家が客を招くことを強く前提にした作りになっていることに気付かされます。家の手入れや掃除をすることと客を招くということとが、シームレスにつながっている。昨年祖母が亡くなってから祖母の家が、祖母に招かれる家から、自分もそこに住まい、耕し、手入れする家に変わる中で、この家に客を招くべきだという気持ちが生まれ、今に至ります。
 年の瀬バタバタする時期ですが、ぜひお越しください。